オウンドメディアの成功事例:トヨタイムズは何がすごい?狙いや特徴を解説

企業の情報発信が当たり前になった今、「オウンドメディア」を立ち上げる企業が増えています。
とはいえ、ただ記事を更新しているだけでは「見られるメディア」には育ちません。そこで注目されているのが、トヨタ自動車が展開するオウンドメディア『トヨタイムズ』です。
トヨタイムズは、社内報でも広報紙でもない、まさに“企業がつくるメディア”の代表格。
いわゆるPR臭さが少なく、「なぜか読んでしまう」「気になる存在」として、他の企業からも一目置かれる存在になっています。
本記事では、トヨタイムズの特徴や狙い、何がすごいのか?をわかりやすく解説しながら、オウンドメディア運営のヒントを探っていきます。
目次
- トヨタイムズとは?トヨタが手がける異色のメディア
- なぜトヨタイムズは成功したのか?その狙いと本質
- オウンドメディアの今後と、トヨタイムズから学べること
- 今日から真似できる、トヨタイムズの発信手法3選
- まとめ:トヨタイムズは“自社の声を社会に届ける”ための理想形
トヨタイムズとは?トヨタが手がける異色のメディア

トヨタイムズは、トヨタ自動車が運営する公式の情報発信メディアです。
テレビCMやWeb広告などでもよく目にする「トヨタイムズ」のロゴや、香川照之さん(現在は降板)のリポーター的な立ち位置を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
一見すると企業の宣伝メディアのように見えますが、実際のコンテンツはかなり本格的。
自動車の技術革新や経営陣へのインタビュー、新しい取り組み、現場社員の声など、「トヨタの中身」に正面から迫る姿勢が印象的です。
Webメディアとしては2019年にスタートし、現在ではテレビやYouTube、SNSなど複数のメディアチャネルと連動した“クロスメディア型オウンドメディア”として展開されています。
トヨタイムズがすごい理由①:あえてテレビ広告で“オウンドメディア”を宣伝
まず驚くのが、トヨタイムズはテレビCMを使ってWebメディアの存在を宣伝しているという点です。
本来、オウンドメディアとは自社の持つ“土俵”であり、広告に頼らずSEOやSNSなどでじわじわ育てていくイメージが強いですよね。
ですがトヨタは、CMや新聞広告という伝統的なマスメディアを活用して、あえて「このメディアを見てください」と正面から打ち出してきました。
この発想がすでに新鮮です。
自社のメディアを“ブランドそのもの”として押し出し、一つの情報チャネルとして確立しようとする意思が感じられます。
また、テレビCMを見た人が実際にWebで「トヨタイムズ」と検索する流れも自然に設計されており、マスとデジタルを融合させた広報戦略としても非常に完成度が高いと言えます。
トヨタイムズがすごい理由②:企業広報の“見せ方”を工夫している
トヨタイムズが注目される理由の一つは、企業の情報を「面白く」「わかりやすく」伝える工夫が随所にあることです。
たとえば、単に社内の出来事や経営情報を掲載するのではなく、現場のリアルな声を交えたり、映像やインフォグラフィックを使って視覚的に伝えたりといった工夫が凝らされています。
これにより、製品やサービスの裏側、トヨタが何を考えているかといった“深い話”も、堅苦しくなく親しみやすく伝わってきます。
社内外の人にフォーカスしたコンテンツや、ドキュメンタリー風の映像シリーズなども用意されており、企業活動をひとつの“ストーリー”として見せる設計になっているのが特徴です。
「企業が何を言うか」だけでなく、「どう伝えるか」がメディア運営ではとても重要だということを、トヨタイムズは実践で見せてくれています。
トヨタイムズがすごい理由③:トップが出てくる“異例のオープンさ”

トヨタイムズでは、トヨタの社長(当時)豊田章男氏が自ら登場するコンテンツも数多く配信されていました。
普通、企業のトップは広告やオウンドメディアではあまり表に出ないものですが、トヨタイムズではむしろ「トップ自らが語る」ことを大切にしているように見えます。
それは、クルマや技術の話にとどまらず、経営の方針や組織文化、未来への考え方など、多岐にわたります。
このようにトップが“顔”として前に出ることで、企業としての姿勢や価値観をより強く伝えられるだけでなく、信頼感や共感も生まれやすくなります。
また、時にはトヨタへの厳しい意見にもしっかり向き合う姿勢が見られ、「一方的な宣伝ではなく、あくまで“情報の場”として機能している」という信頼感を高めているのも特徴的です。
なぜトヨタイムズは成功したのか?その狙いと本質
ここまで見てきたように、トヨタイムズはただの企業情報メディアではありません。
その本質は、「トヨタという企業の考えや行動を、正しく・多角的に伝えるためのメディア」であるということ。
ニュースやSNSなど、外部の報道では必ずしも自分たちの意図が正確に伝わるとは限りません。だからこそ、自分たちの言葉で、直接発信する場所を持つことの重要性が年々高まっています。
トヨタイムズはその役割を担いつつ、単なる広報では終わらず、「見る人にとって面白く、ためになるメディア」として成立しているのが最大の成功要因だと言えるでしょう。
オウンドメディアの今後と、トヨタイムズから学べること

トヨタイムズは、オウンドメディアの成功事例として今後も語り継がれていくでしょう。
そして、この事例から学べることは、大企業だからこそできた特殊な手法ばかりではありません。企業の規模に関係なく参考にできる本質的なポイントが詰まっているのです。
たとえば、「伝えたいことを明確に持っているか?」という点。
ただ商品やサービスを紹介するのではなく、“自分たちは何を大切にしているのか”“社会にどう関わっていきたいのか”といった企業としての想いが芯にあるからこそ、メッセージに説得力が生まれます。
また、「誰に向けて、どんな語り口で届けているか?」という視点も重要です。
トヨタイムズは、社員だけでなくユーザーや社会全体にも情報を開いており、あえて“少しくだけた語り口”で距離を縮めようとしています。これは、多くの中小企業にも応用できる発信姿勢です。
単なるSEO目的や「とりあえず記事を更新している」だけでは、読者の心には届きにくい時代。
これからのオウンドメディアには、ブランディングや信頼構築の視点がますます求められてくるでしょう。
さらに、「企業の透明性」「従業員との距離感」「社会への向き合い方」など、広報以上の価値を発信している点も、多くの共感を集める理由の一つです。
今日から真似できる、トヨタイムズの発信手法3選
とはいえ、いきなりトヨタイムズのような本格的なメディアを作るのはハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。
そこで、中小企業でも今日から実践できる「トヨタイムズ的発信手法」を3つに絞ってご紹介します。
1. 社内の人の「声」を前面に出す
トヨタイムズでは、現場社員のインタビューや社内の取り組みが多く取り上げられています。
これを真似して、現場スタッフの思いやストーリー、日々のちょっとした工夫などを記事にするだけでも、ぐっと親近感が高まります。
たとえば、「新人スタッフの成長日記」や「ベテラン社員が語る仕事の流儀」といった内容は、採用・ブランディングの両面で効果的です。
2. トップの考えを“わかりやすく”伝える
トヨタイムズの特徴のひとつは、経営トップの言葉がオープンに発信されていること。
中小企業でも、「社長ブログ」や「代表メッセージ」として、企業の考えや方針を定期的に伝えることは、信頼構築に非常に効果的です。
ポイントは、難しい言葉を並べるのではなく、“自分の言葉で語る”こと。経営の想いや日常の気づきなど、人間味が伝わる内容の方が共感されやすくなります。
3. 情報の“届け方”にひと工夫する
トヨタイムズでは、映像やグラフィックを活用した見せ方に工夫があり、情報が視覚的にスッと入ってきます。
これを応用して、たとえば記事に手書きのイラストや写真、図解を入れてみたり、「1分で読める要約コーナー」を作ってみたりと、ちょっとした“編集の工夫”でも読者の体験は大きく変わります。
「文字だけの記事」に頼らず、“読者が読みやすく、理解しやすい”形を意識することが、オウンドメディアにとっては重要です。
まとめ:トヨタイムズは“自社の声を社会に届ける”ための理想形
トヨタイムズは、マスメディアとWeb、情報とエンタメ、社内と社外、そのすべてをつなぐ“メディアの交差点”のような存在です。
トヨタという巨大企業だからできた側面ももちろんありますが、根底にあるのは「自分たちの言葉で伝える」
という強い意思と工夫です。
オウンドメディアを立ち上げるとき、「何を」「誰に」「どうやって」届けるかを考える際には、ぜひ一度トヨタイムズをじっくり読んでみてください。
そこには、企業メディア運営の本質がぎゅっと詰まっています。